腎虚(じんきょ)とは?
2024.12.20
『腎』とは
東洋医学でいうところの「腎」とは、西洋医学における腎臓という意味ではなく
成長、発育、生殖に関する働きのことを示しています。
具体的には、泌尿器や生殖器などの働きも入ります。
■腎が充実していると、活動的で、病気にもかかりにくく
根気がある、そんなところから「作強(さっきょう)の官」と言われています。
この腎の気が衰えると元気がなくなり、冷え、生殖能力も低下してしまい
病気にかかりやすく、治りにくくなります。
■また腎にある精気を「腎気」と呼びます。
腎気には、生まれたときから持っている「先天の精」と
そのあとから食事などによって得られる「後天の精」があります。
親から受け継いだ腎気は、以後は自分自身の生命活動によって充実します。
また腎気は加齢により減少すると考えられています。
『腎虚(じんきょ)』とは
前述しましたが「腎は精を蔵し、生長・発育・生殖をつかさどる」といわれており
人の一生は腎気の盛衰で表されます。
そして、腎気が衰えた状態が、まさに「腎虚」なのです。
今話題になっているエイジング(加齢)は
東洋医学的にはまさしく腎の衰え「腎虚(じんきょ)」をさしています。
■「腎」は、身体の様々な機能に密接に関わっており
「腎虚」になると様々な衰えの症状が現れるようになると考えております。
漢方では衰えた状態を「虚」と考えます。
加齢は止める事は出来ませんが「腎」の衰えや、不足を補う事で
加齢による様々な症状を緩和したり、改善できるように働きかけます。
■腎をつかさどる部位は?
「腎は水液をつかさどる」
水液とは体内の水分を指し、体液を体内に貯めたり、排泄したりする機能が「腎」の働きの一つとされています。
腎は水液の正常な代謝を維持する機能があります。これは現代医学の腎臓の働きと共通するところです。
この働きが低下すると便秘や尿量減少を起こし、また頻尿なども起こってきます。
「腎は耳と二陰に開竅(かいきょう)し、その華は髪にある」といわれ
髪もまた「腎」がつかさどる部位とされます。
腎気が衰えると、腎がつかさどる部位の機能も低下してしまいます。
腎虚の症状
■腎気が不足する「腎虚」の状態になると・・・

- 疲れやすく、根気が続かない
- 白髪・脱毛が増えた
- 足腰がだるい
- 耳の聞こえが悪い
- 小さな文字が見えにくい
- 皮膚が乾燥する
- つまずきやすい
- 夜何度もトイレにおきる
- トイレが近い・膀胱炎
- 手足が冷えやすい
- ほてりやすい
- 足がしびれる
- 便秘・むくみ
■腎虚には、「腎陽虚」と「腎陰虚」の2つがあります。
「腎」の精気である腎気は2つに分けられます。
ひとつは、からだを温めたり、機能させたりするエネルギーの大元である「腎陽」。
もうひとつは、からだを潤おわせ、栄養をあたえる「腎陰」です。
腎気そのものが充実しているだけでなく、この2つのバランスも大切です。
腎陰に比べて腎陽が不足している状態を「腎陽虚」といい、
腎陽に比べて腎陰が不足している状態を「腎陰虚」といいます。

腎陽虚はエネルギーが不足し、足腰がだるい、下半身に力がない、下半身が冷える
夜中にトイレに起きる、おしっこの出やキレが悪い、といった症状があらわれやすくなります。
腎陰虚はうるおいや栄養が不足し、のぼせやすい、目が疲れやすい、目がかすむ
といった症状があらわれやすくなります。
もちろん漢方における腎虚の考え方は、老化に限定されません。
子供の成長の遅れや不妊症も夫婦の腎の働きがよくないと考えます。
腎は骨を司り、髄を生ずという考え方があり
腎の働きは、中枢神経系にも関与していると言われています。
腎虚を改善させる食べ物
- 大豆・玄米(腎を補う穀物)
- 栗(腎を補う果物)
- 豚肉(腎を補う肉)
- 椎茸(腎を補うキノコ)
- 鰻(腎を補う魚)
- もやし(腎を補う野菜)
特に黒い食べものがいいと言われています。

- 黒きくらげ
- 黒ゴマ
- 黒豆
- 黒米
- ひじき、海苔、昆布、わかめ
- 牡蠣
- 黒酢
腎虚を強くする運動
足腰を鍛える運動が必須です。
腎虚の方は、足が弱かったり冷えているケースが非常に多いです。
激しい運動ではなく、お家でできるスクワット・適度なウォーキングなど
筋力が落ちないよう運動を心掛けましょう。
冷え予防
腎は冷えや冬の寒い季節に傷めやすいので、冷えから身体を守りましょう。
とくに、身体のくびれている場所(首元、腰回り、手首、足首など)を温めると冷えにくくなります。
温かい飲み物や「生姜」など身体を温めてくれる食べ物を積極的に取り入れて
身体の内側からも意識して温めましょう。
38~40℃のぬるま湯にゆっくり浸かり、良質な睡眠をとることで
また自律神経のバランスも整ってきます。
腎虚にいいとされる漢方薬
■六味地黄丸
体のほてりやのぼせなどの症状のある人つまり「暑がりタイプの人」に使用されるもので
地黄、山茱萸(さんしゅこ)、山薬(さんやく)、沢瀉(たくしゃ)
茯苓(ぶくりょう)、牡丹皮(ぼたんぴ)という6つの生薬から構成されています。
- 疲れやすい
- 尿量が減ったりあるいは増えたりする
- 手足がほてり、口が渇いく
■八味地黄丸は、
六味地黄丸に、身体を温めて新陳代謝を促す附子(ぶし)と肉桂(にっけい)を加えたもので
体の冷えやむくみなどの症状のある人、つまり「寒がりタイプの人」に効果があります。
- 四肢が冷えやすい
- 夜中トイレに起きる
- 頻尿、残尿感がある
■牛車腎気丸
八味地黄丸に牛膝(いのこずち)と車前子(しゃぜんし)という生薬を加えたもので
症状がより重い場合に処方されます。
- しびれがある
- 下肢がむくみやすい
- 腰痛がある
「腎虚」を改善させるには、補気・補血も重要ですがそれだけでは力不足、同時に「補腎」が必要です。
体質を見極めながら、「補腎」の漢方薬を常用して、「腎精」を補充していきます。
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